九州電力など大手電力4社のカルテル問題で、国や自治体による指名停止の処分が広がっている。カルテルは電力自由化を骨抜きにする違法行為で、自社の利益を優先したコンプライアンス(法令順守)意識の希薄さを露呈した。指名停止で公共施設の電気代が上がる懸念が出ており、消費者がそのツケを払わされることになる。「規定に沿って指名停止にしたのに住民に負担を負わせるのは心苦しい。入札で手を挙げる新電力会社が現れるのを願うだけだ」。ある自治体の担当者は、九電に対する処分に複雑な心境を打ち明けた。公正取引委員会は3月、九州、中国、関西、中部の4電力のカルテルを認定し、課徴金減免(リーニエンシー)制度で全額免除の関電を除き、3社側に計約1010億円と過去最大の課徴金納付を命じた。これを受け、経済産業省は4社の入札参加や補助金交付を停止。福岡県と福岡市、北九州市、宮崎県、鹿児島県は、庁舎や学校など公共施設で電力を購入する入札に九電を参加させない処分を決めた。指名停止について、熊本県は「公取委の処分内容と県の要綱を精査し、決定する」とし、大分県も検討している。中国電に対しても山口県が検討を始めており、大手電力への処分は広がる見通しだ。福岡県は、九電を指名停止にする6か月間で、県立美術館や合同庁舎など116施設の入札を予定している。いずれも2年契約で、前回入札は九電が全て落札し、落札価格は計約7億5000万円。九電には経営の痛手となるが、深刻なのは利用者の負担増につながる恐れがあることだ。大手の入札不参加で競合が減れば、落札価格が高くなる可能性がある。最大のライバルである新電力は燃料価格の高騰で、どこも経営が厳しいのが実態だ。電力を売れば売るほど赤字が膨らむ事業者も少なくない。最も危惧されるのは、入札にどこも参加しない事態だ。実際、福岡県の2年前の入札に応じたのは九電だけだった。入札が不調に終われば、自治体は原則、大手の送配電会社から「最終保障供給」として割高な電気を買うことになり、通常より約2割高くなる。
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